対象者(子供)の持つ特性として、新しいもの、自分と違いものに対し、注意が向く、そして見たい、聞きたい、触れたいという潜在欲求があげられる。動物側の特性としては、その動物の持つ社会システムによって異なるが、人間に対するアテンション(正・負とも)が基本的に存在し、人間とは違った方法で人間を見る。例えば、彼らは肌の色、学校の成績などは気にせず、その生物が自分に対して危険を及ぼす可能性があるのか(aggression)が判断の基準になってくる。またある動物は好奇心により人間との接触を求めてくる場合も考えられる。そして、GCにおける多くの動物に関しては生きていくのに人間の助けが必要な状況にある。これらの両者の行動特性によりGreen
Chimneysにおける子供達と動物の相互関係・作用が発生してくると考える。
単なる動物の存在だけで子供から不安(kova、1977 )、うつを軽減させる(Holcomb 1997
)だけでなく興奮またはリラックスと正反対の効果を与えることができる可能性がある。そして、その子供に対しどちらの効果が見られるかはその動物の種類、治療の場、そしてその子供のもつ動物との経験に依存する。
また、子供と他者(stuff・interns )との出会いの場面において動物がそこに存在した場合、Levinsonのジングルスのケースの様に子供の興味はその他者よりも動物に向けられる可能性が高く、動物が子供と他の人間との仲介者になることができる。非虐待児など、トラウマタイズされ大人に対し恐怖心、または疑心を抱いている子供であっても動物の存在に興味がひきつけられる事によりそれらの感情が一時的に軽減、または忘れさせることができ、他人との第一の関係形成仲介役としてその過程をスムーズに形成できる可能性が考えられる。また、その存在する動物を愛情のシェアーの対象として存在させることによりコミュニケーションもスムーズにはじめさせる働きがあると考えられる。また、GC独自の効果になると考えれるが、レスキューされたり保護されてきた動物達がCampusに存在しstuffによって暖かく治療されたり、今は元気に生活している姿を見たり、聞いたりすることで、それを理解する能力のある年長児などは実際にその動物との直接的な接触がなくとも安心感を得ることは可能であると考える。これらが動物と子供のグリーンチムニーズにおける関りにおける一次的効果(存在効果)であると考える。
その出会いの後の動物と子供の関わりとして、相互の注目、話しかける、触れる、そして世話をするなどが挙げられる。そのなかでも動物に触れること、話しかけることが子供達にもっとも頻繁に見られる動物との接触の方法であった。これらの基本的な関りだけにおいて考えられる人間への二次的効果(短期効果)として、活動の増加、遊びの提供、気分転換、リラックスが挙げられる。これらはAAAとして、またAATのベース作りとしても活用できると考えられる。安全に保護されていると理解される動物を観察すことにより健康への直接的でポジティブなインパクトを与えるという一貫している証拠がある(Katcher
et al. 1993; Eddy,1995,1996)。例えば、子供に安心感を与えたり、(Lockwood、1983
)、幸福感を与えたりすることができる(Rossbach&Willson、1992)。それらの働きにより例えばADHDやconduct
disorder(行動障害)を持つ子供は、仲間や両親、大人達に対し敵意を表したり、彼らの持つ攻撃性を正当化する傾向があるが、それらの子供のセラピーに動物を介在させるとそのネガティブな傾向が軽減され子供と大人の関係をよりスムーズに結ぶことができる。また、動物はADHDをもつ子供達にとって、次に何をするか予測がつかない事からも注意を払うことの良い練習対象となる。例えば動物の散歩、ブラッシングなど、子供のやりたいことをレインフォースメントとして用い、それを行うために簡単な掃除や片づけを条件として用いる。それによりRelationshipにおけるGive&Take(まずは動物の世話をしてから自分が楽しむ)、ルールを学ぶ事ができたり、物事を継続することの良い練習するいい機会となる。動物の存在は子供にとって十分な動機づけとなり、対人間との社会性を学ぶためのドアを開くことができる。
また、動物との関わりによりかわいい、楽しい、面白いなどのポジティブな感情の喚起、またそれらの感情のラベル付けを関わりの中で行っていくことができると考える。幼児期において様様な感情を学んでいく課程として、両親が子供の表情、行動を見て“うれしいの?”“楽しいの?”、また、Negativeな感情、“機嫌が悪い”“怒ってる”もまた、問いかけによりラベル付けをされていくことで学んでいくことができる。しかしその時期に両親との関わりが欠けていると(ネグレクト)、その子供は自分が感じていることと感情の名前を結びつけることができなくなる。その欠けてしまっている段階を動物とのかかわりを通しラベル付けしていくことで補うことができると考える。そして自分の感情を知ることにより必要な場合は対処方法も一緒に考えていく事につながっていくと考える。また、ここにいる子供の多くが集中力に欠けるといった問題を抱えている。その強化はこの段階においても発生し得る効果であると考える。最後に一つの過程として、動物の世話の仕方を学ぶ事で、スタッフや他の子供達とのポジティブな相互作用が起こり、その子供の自尊心の向上、また、他のサブジェクトに対する向上心も生まれてくる可能性が考えられる。
そしてさらに両者が長時間をともにし、また世話をしていくうちに関係が深められていくことによって動物の役割に変化が生じる可能性がある。世話をして動物もそれに答える反応を示すと、それが正の強化として働き、動物と人間の間での関係が形成されていく。その関係の形は時に友情であったり愛着であったりする。また、動物を訓練したり、彼らが自分の指示に従うことで信頼関係が形成される。そして動物の世話をすることと自分が楽しめること、例えば乗馬の授業においてまずはブラッシングをしてからRidding,
があることに気付く事により相互依存関係が形成される場合も考えられる。そしてこれらの絆が生まれることによって人間への三次的効果(長期効果)が生じると考える。
三次的効果としては友情関係や愛着などの絆が、ある特定の動物とその子供の間で形成され、関っていくことによって孤独・不安の解消の効果が得られる。
他の世話をするプロセス、例えば、餌やり、触れる、抱きしめる、守るなどの行動は私達に私達が同じ世話をされているという感情をもたらす。そのため、一部のペットオーナーは自分の感情を満たすため過剰とも思われる世話を焼く行動を取る、そして、その行動は鬱や寂しさを紛らわすことができる。(Katcher,
1988)
またそれらの関わりの中で感情表出・愛情表現法の獲得も付随してくる。虐待の経験がある子供は適当な愛情表現方法、Boundaryの保持を学ぶ機会に恵まれなかった可能性が高い。またconduct-disorderedをもつ子供達や思春期の子供達の多くはクラスメイトなどの仲間内での社会性に乏しいという特徴が見られる。.そのためある動物と上記いずれかの絆が形成されることにより何かしてあげたい、一緒にいたいなどの感情がわいたときにどのようにその感情を社会的に受け入れられる方法で表現したらよいのかわからない。そこでスタッフがガイドとなりそれらの方法をrole-modelとして見せ学ぶ機会を与えることができる。また反対に嫌がることはなになのか学ぶことも可能である。そして、例えばその子供にとっては駆け寄っていって抱き上げることが愛情表現の一つであると考えていたとしても、動物は驚いて逃げてしまう。そこで、自分の行動がその動物に対してどのような影響を及ぼしたのか、その動物の反応を通して考えることができる。これらの動物とのかかわりを通し、相手に合わせる大切さ、Boundary(境界)の重要性を実体験で感じることができる。それらの動物との交流・相互作用を通して社会性を獲得し、他者との関係の促進につながると考えられる。そして、その動物の世話を継続することで、子供の社会的役割の変化が生じ自己効力感を感じることができ、自信の向上につながる。また、責任感の獲得や独立心の付随も期待できる効果であると考える。
Greenchimneysにいるほとんどの子供達は基本的信頼に欠ける環境で育ってきた。動物は子供達にとって話をさせる動機づけになる。話をすることで彼らの心の底に隠されていた過去の出来事に対する感情や考えを整理させ理解を促進させることができる。そして、Greenchimneysでよく見られる子供達の特徴としては彼らはファームの中の自分と同じ境遇や性質、特徴をもつ動物、、例えば飼い主に虐待されレスキューされてきた馬、他の動物たちとうまくいかず一人でいる馬、反対に羊と仲の良いロバ、周りより小さい馬、等を自分と同化させ、その動物の世話をしたり問題が解決するよう努力をすることで自分と向かい合おうとする。
そして過去を振り返り受け入れることができたり、将来への希望が持てたりといった回想作用などの効果も考えられる。これらの効果は虐待によりトラウマタイズされた子供など各種PTSDを持つ子供に対して有効であると考える。